向うの方に、納屋《なや》のある家が一軒建っていた。その家には、世の中とはかけはなれたような一家族が住んでいた。そして、雨を降らしたり、谷間に吹雪《ふぶき》を積らせたりする雲が、この佗《わび》しい、淋しい住居よりも下の方にかかることもめずらしくなかった。
 丘の一番高いところには石が積んであって、そのまん中に長い棒を立て、その棒のさきには、小さな旗がひるがえっていた。ユースタスは子供達をそこへ連れて行って、彼等に、四方を眺めて、われわれの住む美しい世界がどんなに広く一目《ひとめ》で見渡せるか、まあ見るがいいと言った。そして、子供達は四方の景色を見て、目をまるくした。
 南の方に見えるモニュメント山は、相変らず景色の中心にはなっていたが、何だか、低く落ち込んでしまって、今では沢山の丘のかたまりのうちの、あまり目立たない一つのような気がした。その向うに、タコウニック山脈が、今までよりも、高く、大きく見えた。われわれのきれいな湖が、その小さな湾や入江をすっかり見せていた。そして、それ一つだけではなく、今まで見たことのない湖が二つ三つ、太陽にむかって碧《あお》い眼をあけていた。それぞれ教会堂のある、いくつかの白い村が、遠くの方に散らばっていた。幾|町歩《ちょうぶ》もある森林や、牧場や、草刈場や、耕地などのある農家が、あまり沢山あるので、子供達の頭は一杯になってしまって、そうしたいろいろのものを、みんな詰め込みきれないほどだった。それからまた、彼等が今日まで世の中のとても大切な頂上のように思っていた、タングルウッドがあった。それが、こうして見ると、ほんのちょっとした場所を占めているだけなので、その在処《ありか》を見つけるまでには、とんだ遠方を眺めたり、右や左を見たりして、みんなで相当長い間捜したのだった。
 白い、羊の毛のような雲が空に浮かんで、山野《さんや》のここかしこに、黒い影を投げていた。しかし、まもなく、影になっていたところに陽が当って、影はほかのところへ移って行った。
 はるか西の方に、青い山脈が見えていたが、ユースタス・ブライトは、それがキャッツキルの山々だと子供達に教えた。あのぼんやりとかすんだ山の中に、幾人かの年取ったオランダ人が、いつ終るとも知れない九柱戯をやっていたところがあって、またリップ・ヴァン・ウィンクルという怠者《なまけもの》が、二十年もぶっ続けに眠
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