奴等で、またあれほど冷たい血をした人間共もなかったんだから。そんなわけだから、ボーシスばあさん、あなたかおじいさんかが、焼いた鱒でも食べたくなった時には、いつでもおじいさんが糸を投げ込んで、もとの村人達の五六尾も釣上げればいいんですよ!』
『ああ!』ボーシスは身ぶるいしながら叫びました、『わたしは、どんなことがあっても、彼等を焼網に乗せたりしたくありません!』
『そうだ、』と、フィリーモンも、顔をしかめて附け加えました、『わし達は彼等をうまがってたべたりなんぞ、どうして出来るものかね!』
『善良なフィリーモンよ、』年上の旅人は、語《ご》を継《つ》いで言いました、――『そして、親切なボーシスよ、――お前達においては、家をはなれた他郷者を、かくまで心からの親切をこめてもてなしたによって、牛乳は神の御酒の尽きざる泉となり、黒パンと蜂蜜とは神のお口にかなうものとなった。かくして、神々は、お前達の食卓において、オリンパスの饗宴に供えられるのと同様の食物で、もてなしを受けた。年寄達、上出来であったな。そこで、何でもお前達の一番の望みをいうがよい。かなえてつかわすぞ。』
フィリーモンとボーシスとは互に顔を見合せました、そして、――二人のうちのどっちが口をきいたのか、僕は知らないが、とにかく二人の心のねがいを述べました。
『わたし達が、生きている間は、一しょに暮らして、死ぬ時には、一しょに死なせて下さりませ! と申しますのは、わたし達は常に愛し合ってまいりましたのですから!』
『その通りになるように!』と、見知らぬ人は、おごそかなやさしさを以て答えました。『さて、お前達の家の方を見るがいい!』
彼等は言われるままに家の方を見ました。しかし、大きくあけひろげた玄関のある、白い大理石の高い建物が、ついさっきまで彼等のみすぼらしい住居《すまい》のあった場所に建っているのを見た時の彼等のおどろきはどんなだったでしょう!
『あれがお前達の家だ、』と言って、見知らぬ人は彼等二人にやさしくほほ笑みました。『お前達が昨晩、われわれを見すぼらしいあばらやに喜び迎えた時と同じように、物惜しみすることなく、あの立派な家にはいってからも人々を親切にもてなせよ。』
老夫婦はひざまずいて彼にお礼を言おうとしました。しかし、これはどうしたことか! 彼もクイックシルヴァも、そこにいませんでした。
こうして
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