の遊んでいる、広い、街路樹の植わった通りや、それから商売をしたり、楽しく遊んだりして、立派に暮らしているらしい様子などがいろいろ見えていた谷の方に振り向きました。ところが、彼等はどんなに驚いたことでしょう。いつのまにか、村らしいものはまるで無くなっているではありませんか! 村がその底の方にあった、ゆたかな谷さえも、なくなってしまっていました。その代りに、彼等は湖の、広い、青い水面を見ました。それは大きな鉢のようになった谷の端から端まで満たして、まるで世のはじめからそこにあったかのように、まわりの山々の静かな姿を、その中にうつしていました。ちょっとの間、湖は少しの波も立てないで静まり返っていました。それから、風が少し出て来て、水を朝日影に踊らせ、光らせ、かがやかして、さらさらと快い音を立てて、こちらの岸にぶっつけました。
その湖は、妙に見なれたもののような感じがするので、老人夫婦はまったく狐につままれたようで、そこに村があったというのは夢に過ぎなかったかのような気がしました。しかし、次の瞬間には、彼等は無くなってしまった民家や、そこに住んでいた人の顔や性質を、夢にしてはあまりにはっきり思い出しました。村はたしかに昨日まであったのです。そして今はもうないのです!
『ああ! あの村の人達は、可哀そうに、どうなったのでしょう?』と、心のやさしい老夫婦は叫びました。
『彼等は、もはや男や女としては生きていない、』と、年上の旅人は、荘重な、深味のある声で言いましたが、その時、遠くの方で、雷がそれに応《こた》えるようにごろごろと鳴ったような気がしました。『彼等のような生活は、何のやくにも立たなかったし、またちっとも美しいところもなかった。というのは、彼等は人と人との間のやさしい愛情を働かして、人間の苦しい運命をやわらげて、少しでも楽しいものにしようとは決してしなかったから。彼等の胸には、もっといい生活の面影が少しも残っていなかった。だから、ずっと前にあった湖が、再びひろがって来て、ただ空を映《うつ》すというようなことになってしまったのだ!』
『それから、あのおろかな人達はどうなったかというとね、』と、クイックシルヴァは例のいたずららしい笑い方をして言いました、『みんな魚にされてしまったのさ。別に大して変えることも要らなかった、というのは、彼等はもとからうろこの生えたような下等な
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