日になつてもやまず、どうやらそれは暴模樣のやうにもなつた。――再び晴れた青空をみることが出來たとき、その青空のいろがもう水のやうに澄み盡してゐた。さうして、身にしみて冷めたい風がふいた。
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といふ秋の初めから、年の暮迄の時雨の多い頃である。
「さざめ雪」は、
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暗い、時雨のやうな雨が來て、漸次秋の深くなつて來る夜ごろ
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である。
「三の切」は、
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暗い便りない時雨の日がつづいて、今年もそこに十一月が來た、酉の市が來た。
初冬の宵の寂しさに、臺所の障子のかげに、細々と※[#「虫+車」、第3水準1−91−55]《いとゞ》のなく頃である。
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「冬至」にはその題の示す通り、
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冬至だつた。――雪にでもなるらしく、暗く、凍てついた空に、ときどき、一文獅子の太鼓の音ばかりが心細く響いた。
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「老犬」にはその初めに、
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十一月の末から十二月にかけて
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とあつて何れも冬だ。さうして此の冬空の灰
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