貝殼追放
先生の忠告
水上瀧太郎
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)枕頭《まくらもと》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]――「三田文學」大正八年一月號
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)びく/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
或日曜の朝の事であつた。寢坊をした床の中でぼんやりして、起きようか寢てゐようか迷ひながら、枕頭《まくらもと》の火鉢の上の鐵瓶の口から、さかんに立昇る湯氣を見てゐるところに、こまつちやくれの下宿の小婢《ちび》が、來客のある事を告げに來た。その取次いだ名前が昔の學校友達のそれと同一だつたので、自分は一緒に惡戲《いたづら》つ子だつた中學時代の友達の、今川燒のやうにまあるく平べつたくて、しかもぶよぶよしてゐた顏中を想ひ出しながら、狼狽《あわ》てて飛起きて洗面場に馳けて行つた。
身じまひをして、玄關に出て見ると、其處にはまだ十八九の見馴れない少年が一人ゐるばかりだつた。側に立つてゐる小婢に、
「お客は。」
と訊《き》くと、
「そのお方
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