貝殼追放
「海上日記」の序
水上瀧太郎
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)止《や》めた
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)恫※[#「喝」の「口」に代えて「りっしんべん」、第4水準2−12−59]
−−
大正元年の秋北米合衆國に渡り同三年の初夏の頃迄東部マサチュセツ州ケムブリツヂの學校町の下宿の二階に一年あまりを送つた間に書いたものを集めて一册とした。
その頃自分はそれ迄に書いた自分の作品の誇張と衒氣に冷汗を覺えると同時に世上行はるる小説戲曲評論の類の小悧巧と恫※[#「喝」の「口」に代えて「りっしんべん」、第4水準2−12−59]に厭氣がさし先づ努めて自分の持つてゐる慣習的の技巧を振捨てようと考へた。所謂小説らしい小説やお芝居らしい戲曲と絶縁する爲めの消極的手段として日記を記す心持で書いて見ようと思つた。この集に收めた四篇は手習艸紙のつもりで書いた夥しい原稿の中の一部である。「船中」と「同窓」は中途で厭になつて止《や》めたのを後に加筆稿了し「楡の樹
次へ
全3ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
水上 滝太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング