貝殼追放
愚者の鼻息
水上瀧太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)繙《ひもと》いて

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)名|告《の》つた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
(例)つく/″\
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 人をつかまへて親切めかして忠告するのは、人をつかまへて無責任に罵倒するのと同じ位いい氣持なものである。
 これは自分の座右の銘では無い。大正七年二月深川區猿江町吉村忠雄と封筒には署名し、半紙七枚に鐵筆で細かく書いた「水上瀧太郎君に與ふ」といふ文章に次郎生と名|告《の》つた人から難詰状を受取つた時に、ふと自分の腦裡に浮んだ安價なる詭辯である。
 吉村忠雄氏事次郎生、若しくは次郎生事吉村忠雄氏、或はもつと正確にいへば吉村忠雄及び次郎生事某氏は、
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瀧太郎君足下
余は君とは昵近の間柄のものである。否獨り君のみとは言はず君の一族同胞には格別なる近親の者である――君の生立や兩
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