だに違ひない。
要するに自分は、世間の目から廢嫡問題の主人公としての他、偏見無しには見られなくなつてしまつたのだ。多數の人間の集會の席に行くと、あちらからもこちらからも、心無き人々の好奇心に輝く目《まな》ざしが自分の一身にそゝがれ、中には公然指さして私語する無禮な人間さへある。
如何に寛容な心を持ちたいと希ふ自分も、かかる世の中に身を置いては、どうしても神經の苛立つ事を止めかねた。どいつも此奴《こいつ》も癪に障ると思はないではゐられなくなる。さうして自分は一日と雖も、新聞記者を憎む事を忘れる事が出來なくなつた。
自分は決して新聞記者を、社會の木鐸だなどとは考へてゐないが、彼等が此の人間の形造る社會の出來事の報告者であるといふ職分を尊いものだと思ふのである。然るに憎む可き賤民は事實の報告を第二にして、最も挑發的な記事の捏造にのみ腐心してゐる。さうして新聞記者といふものに對して適當なる原因の無い恐怖をいだいてゐる世間の人々は、彼等に對して正當の主張をする事をさへ憚つてゐて、相手が新聞記者だから泣寢入のほかはないと、二言目には云ふのである。それをいゝ事にして強《こは》もてにもててゐる下
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