だつづいてるのかい。」
「僕ももう切れたこととばつかし思つて居たのでしたが、どうもさうで無いらしい。
と云ふのは一昨日の話です。どんな相談があるかと思つて行つて見ますと、若奥さんが僕を小蔭によんで、
『桑野さん。貴方に相談があるの。こればつかりは誰にも云はないことなのよ。それはねえ、うちの旦那のこつたがねえ、毎晩一時つて云はなきや帰らないでせう。いろいろ忙しいことがあるのですから仕方もないが、又例の病気にでもなると悪るいしするから、いつそのことあや子をお妾さんにしたらどうだらう。』
相談と云ふのはかう云つたことなんです。」
「そんな馬鹿なことが出来るものか。」
白川は桑野がこんなことを問題にして居るのをむしろ歯痒いことにも思つた。
「僕も無論さうは云つて置いたんだが、しかし若いのの考へでは、いつそさうもしたらばと云ふ気になつて居るらしいんですつて。」
「細君がかい。」
「さうです。あや子が直接話しこんださうなんですよ。私がおつきして居た方が旦那のおからだのおためでせうつてなことを云つて、甘く丸めつちまつたらしいのです。」
「世間知らずだからなあ。細君は誤解して居るんだな。妾にして
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