接には自分の信托会社も関係のある埋立工事の事業資金に廻さうと計画し、経営者と金主との間に立つて、自分は一面借主となり一面貸主となつて、三面的紛糾を解決しようと試みた。徐々に話は進行して行つて、白川はたうとう戸畑を説き伏せて、五万円の現金を三日前に信托会社へ持つて来た。
「さあ松村さん、やうやく金は出来た。今日納めて貰はう。訴訟の相手方から資金を出させて、それで利益を生ませて、その金を示談金に向けるなんざあ、一寸ない形式だね。実に骨が折れたよ。こんな仕事は俺だから出来るんだと云つてもいいよ。俺はいつも至誠で行く。赤裸々だ。掛引なんどを用ひない。示談は相互の利益なんだからねえ。」
しかし松村はおいそれとその金を受入れることが出来なかつた。白川が苦心談を聞いてゐるのさへ座に堪へない程であつた。と云ふのは代金の証書としては会社の手形で松村と、も一人奥田と云ふ松村の同僚の裏書が条件となつて居た。白川がそれを確めたとき松村は無造作に承知して居たのであるが、まだ奥田の承諾を得てなかつた。それに貸出の方なる事業者から徴すべき担保物の調査も届いて居ない。白川が必ず引出してくると云つて居ても、其云ふこと
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