夜烏
平出修

−−−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)精《しら》げられない

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)。段段|先方《むかう》では

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+解」、第3水準1−86−22]《くぬぎ》の

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ひよろ/\した
−−−−

 夏水をかぶつた猿ヶ馬場耕地の田地は、出来秋の今となつては寔に見すぼらしいものであつた。ひこばえのやうにひよろ/\した茎からは、老女のちゞれた髪の毛を思はせるやうな穂が見える。それも手にとつて見るとしいな[#「しいな」に傍点]が多い。枯穂も少くない。刈つたところで藁の値うちしかないかもしれない。米として見た処で鳥の餌の少し上等な位にしか精《しら》げられないだらうと思はれる。地租特免になつても、小作ばかりの此貧村の百姓に何のお蔭があらう。骨つぷしの強い男共は、遠い上州の蚕場へ出稼に行つた。中には遙かに遠い北海道あた
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