計画
平出修
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)亨一《かういち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)段々|昂《たかぶ》つて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「「饂」の「食へん」に代えて「酉」」、第3水準1−92−88]
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「昨日大川君から来たうちから、例の者を送つてやつて下さい。」亨一《かういち》は何の気なしに女に云つた。畳に頬杖《ほほづえ》して、謄写版の小冊子に読み入つて居たすず子は、顔をあげて男の方を見た。云ひかけられた詞の意味がすぐに了解しにくかつた。
「静岡へですよ。」男は重ねて云つた。女はこの二度目の詞《ことば》の出ないうちに、男が何を云ふのであるかを会得して居た。「さうですか。」と云はうとしたが、男の詞の方が幾十秒時間か早かつたので、恰《あたか》も自分の云はうとした上を、男が押しかぶせて来たやうな心持に聞取れた。それ丈け男の詞がいかつく女の耳に響いた。不愉快さが一時に心頭に上つて来た。
「ああ、それは
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