に打ち明けたときでも、無論最後の解決がついてるのではなかつたが、男はもう彼にその覚悟があるのだと思つてしまつた。そして其計画を止《や》めてしまへと切諫《せつかん》をした。女は、「それはまだ考へなけりやならないことです。」と云はうとしたが、それが女の自負心を傷けるやうにも思はれた。あの事を止めてしまへば自分は「ただの女」となつてしまふ。一旦は喜んで貰へるかもしれないが直に又侮蔑がくるであらう。
 たうとう女は云つた。
「貴方は私をどうなさらうと云ふお積り。」女の詞の調子はやや荒々しかつた。
 男は女が何か思違《おもひちが》つて居るのであらうかと思つて、殊更に落着いて、
「どうしようとも思ひません。ただ貴方に平和が与へたいばかりです。」と云つた。
「そんなもの私には不必要です。私は戦士です。革命家です。闘ひます。あくまでも。」かう云つた女の唇は微にふるへて居た。
「貴方は私の云ふことを誤解して居ます。貴方が労役に行く。それもいいでせう。貴方がそれほどに仰有るなら、私も強て反対はしません。私はただ貴方の病気を心配するんです。毎晩の様に不眠症にかかつて、ねつけばすぐ盗汗《ねあせ》がすると云ふぢ
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