です」と云つた詞で満足した。
「取つたんですけれど…………。」と被告が云つたその「けれど…………」を全くないものにして「よし」と云つた。そして次の審問にかかつた。
「第一の事実………‥御大喪《ごたいさう》の絵はがきを窃取したことは間違ひないのだな。」と裁判長は問を改めた。
「はい。…………それは…………それは…………」
「それから懐中電燈も取つたんだな。」
「その…………その…………小包が切れて居まして…………。」
「取つたと云ふのだな。」
「はい。…………小包がきれて居まして、…………絵端書は…………。」
「お前は一体九月から集配人になつたんだな。」
「はい。見習を少ししまして。」
「そして本件の犯罪は九月十五日から十八日の間に犯して居る、」かう云つて裁判長は、ぐつと被告をねめつけた。
「お前は最初から泥棒をするつもりで雇はれたんだ。集配人になるとすぐぢやないか、本件の犯罪は。」
「いえさう云ふ訳ではありません。御大喪の絵はがきは…………。」
「もういいわ。証拠をよみきかせる。」[#底本は「」」を脱字]
裁判長の読んだ証拠書類と云ふのは、悉く被告の犯罪事実を確定するに必要なものであ
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