れはここんとこを言うんだ。」それから彼はひとりごとのようにつぶやくのであった。「大丸の親爺め、どうせ今年きりでこの鰊場投げ出さずばなんめえものを、わずかばしのものケチケチしやがって思いきりのわりい奴だてば。」
源吉はその言葉をききとがめた。
「投げ出すって?大丸、もうかってるんでねえのか。」
それには答えないでかえって山本の方から尋ねた。
「おめえ、沼田村だって言ったな。大山って地主知ってるべ。」
「ああ俺んとこの隣村の地所ア、まるっきり大山のもんだ。」
「この鰊場ア、あの大山のものになるべってことよ。」
「ええ?」
「おめえ、鰊場の仕込にゃア、いったいどのくれえの金かかるか知ってっか。」
そこで山本は源吉に詳しい説明をしてきかせた。彼は大丸と大山との関係をつぶさに知っていたのである。而して彼の説明によれば、この小樽切っての海産問屋、大丸の債権者大山は、同時に又後志地方の大地主でもあったのである。
「だからよ。」と山本はいった。「大きい奴はみんなそうしてどんどん太って行ぐんだ、世のなかの仕組みがちゃんとそういうふうにできているんだ。」
「この話だけでもよっくわかるべ。」と彼はまた
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