が出ましてね。手先や足先が痺《しび》れて感覚がなくなって来たことに自分で気づいたころから、病気はどんどん進んで来ましたよ。もっとも自覚がないだけでよほど前から少しずつ悪くはなっていたんでしょうが。人にいわれて気がついて見ると、なるほど親指のつけ根のところの肉、――手の甲の方のです、その肉なんかずっと瘠せていますしね。第一子供の時の写真から見ると、二十ごろの写真はまるっきり人相が変っています。子供の時は、ほんとうにかわいい顔でしたが」
「誤診ということもあるでしょうが、医者は詳しく調べたんですか」
「ええ、手足が痺れるぐらいのうちは、私もまだ誤診であってくれればいいとそればかり願っていましたが、それから顔が急に腫れはじめた時にもまだ望みは失いませんでしたが……しかし、今となってはもう駄目《だめ》です、今は……、太田さん、あなたも御覧になったでしょう、え、御覧になったでしょうね、そしてさぞ驚かれたことでしょう、眼が……、眼がもうひっくりかえって来たのです。赤眼になって来たのです。ちょうど子供が赤んべえをしている時のような眼です。それからは私ももう諦めています。こわい病気ですね、こいつは。何
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