び》しい目つきでいつまでもじっと人の顔を見つめるようになり、間もなく寒くなる前に死んでしまった。
さきに言ったように太田は癩病患者と棟を同じくして住んでいた。
半ば物恐ろしさと半ば好奇心とから、彼はこの異常な病人の生活を注目して見るようになった。――雑居房の四人の癩病人は、運動の時間が来るとぞろぞろと広い庭の日向《ひなた》へ出て行った。太田はその時始めて、彼らの一々の面貌《めんぼう》をはっきり見ることができたのである。色のさめた柿色の囚衣を前のはだけたままに着てのろのろと歩み、じっとうずくまり、ふと思い出したように小刻みに走ってみ、または何を思い出したのかさもさもおかしくてたまらないといった風に、ひっつったような声を出して笑ったりする、残暑の烈しい秋の日ざしのなかの、白昼公然たる彼らのたたずまいはすさまじいものの限りであった。四人のうち二人はまだ若く、一人は壮年で他の一人はすでに五十を越えているかと思われる老人であった。若者は二人とも不自然にてかてかと光る顔いろをし、首筋や頬《ほお》のどちらかには赤い大きな痣《あざ》のような型があった。人の顔を見る時には、まぶしそうに細い眇目《すが
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