陷入つた(原文六字缺)にとらへられた古賀は、(原文二十二字缺)を迎へたのであつた。とらへられた始終のいきさつについては、今(原文二十一字缺)はある。古賀は少くとも自分一個に關するかぎりヘマはやらぬとの自信を持つてゐたのだが、組織の仕事のことゆゑ、ほかからくる破綻といふものは拒ぎきれぬ場合も多いのであつた。他の同志がつくつた場所が、(原文七字缺)とおもひながら出かけても行かねばならず、さういふとき、自分の身の安全をばかり考へてゐるわけにはゆかぬ。思ひつきの便宜主義、――それが古賀の場合、(原文二字缺)を來たした結局の原因であつたが、だがそれも、經驗のすくない若い組織のことゆゑ、やむをえないことであつたらう。さうしたことを今さらおもひかへしてみたとて何にならう、(原文二十一字缺)のだ。古賀はその確信に安んじ、こゝへ來てからの彼は、たゞひたすらに(原文八字缺)はづかしくない態度をとることにのみ心を碎いたのであつた。彼の心の構へはきまつてをり、腹の底は案外におちつきはらつてゐた。古賀はかねてから、腹といひ度胸といふのも、畢竟は時々刻々に變化してやまない外界にたいする、あるプリンシプルのうへに立
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