ざその時間をえらんだのだったかも知れないが。
 日暮れ方、母はちょっと家にいなかった。そしてその時は芭蕉の下の莚の包みもなくなっていた。
 次の日から私はまた今までのように毎日十五分か二十分あて日あたりのいい庭に出た。黒猫はいなくなって、卑屈な奴等だけがのそのそ這いまわっていた。それはいつになったらなおるかわからぬ私の病気のように退屈で愚劣だった。私は今まで以上に彼等を憎みはじめたのである。



底本:「昭和文学全集 第32巻」小学館
   1989(平成元)年8月1日初版第1刷発行
底本の親本:「島木健作全集第11巻」国書刊行会
   1977(昭和52)年
入力:林 幸雄
校正:小林繁雄
2001年12月21日公開
2005年12月22日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全15ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
島木 健作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング