「特別待遇だぞ。大西の差入れだ。差入れなんて、まだ許す時ぢやないんだが、俺がはからつてやるんだ。」
包みを披いてみると、袷、洗濯したメリヤスシヤツ、猿又、紙などがあり、その上に別の一包みになつて、飴玉と花林糖の紙袋があつた。
「御馳走になります。」とことわつて、また腰をおろし、杉村は飴玉を口に入れた。ただしやぶつてゐるのがもどかしく音をさせて噛み碎いた。袋を見ると事務所の前の駄菓子屋のそれである。彼らの研究會のすんだあとによく買ひつけてゐた店であつた。大西の無事はこれでわかつた。もう一つ知りたいことがある。自分とおなじ状態にあるといふことだけしかわかつてゐない小泉の消息である。それを内田に訊かうとし、咽喉まで聲が出たが、ぐつとおさへつけた。
部屋のなかで着替へ、今まで着てゐたものをそこの隅におき、杉村は房へ歸るために廊下へ出た。
廊下の窓はどこも開け放たれ、爽かな風が音を立てて流れてゐた。もういつか四月も末であつた。窓のすぐ下は賑やかな道路で、春日のなかによそほひのあらたまつた人々の往き來する姿が美しかつた。失はれた自由がまた強く胸に來た。すぐ目の前の電柱に何か大きなポスターが
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