の一半が自分たちの側にあることを見た。だがそれはいかにしてもある程度までは避け難いことにも考へられた。――いつか彼は昔よんだある小説を思ひ出してゐた。ロシアの作家のもので、彼らのなかで彼らのために働いてゐた農村オルグを縛つてつき出した農民を描いたものであつた。なほ多く經なければならないであらうあたらしい試煉の數々について、杉村は思はないわけにはいかなかつたのである。

 一月が經つた。向ひの房の四五人はその間にも二度ほど調べられた模樣だつた。杉村は歸つて來る彼らの顏から何ものかを讀みとらうとしたが不可能だつた。やがて彼らはある日姿を消し(釋放されたのであらう)、その翌日杉村は呼び出されたのである。
 導かれて部屋にはいり、机をへだててそこに坐つた眼の鋭い洋服男の顏を、やや棄鉢な氣持で下から見上げた。たつた一つ、そのことのためにまんじりともしなかつた夜も多かつたその事實が、いや應なしに今はわかるのである……。
「暫くだつたな。」と彼はいつた。杉村はだまつてうなづいて見せた。しかし髯の濃いその圓顏はどこで見た顏かにはかに思ひ出せなかつた。
「元氣か?」
「ええ、元氣です。」
 髯の男は内田
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