象を失つた頭には暗い穴のやうなものがあき、働きかけるべき對象を持たぬ手足は急速に彈力を失つた。あるものはそれをかなり鋭く自覺したし、あるものは自ら意識せず、視線の向け所に迷つてあらぬ方を見つめてゐる濁つた眼つきや、妙にべたついて見える立居ふるまひにそれを示した。白晝何ものもない壁を見てゐてくすくす笑つたり、袖で鼻や顎のあたりをやたらにこする仕ぐさをして見たり、夜は何か叫んで突然とび起きたりするものが段々ふえて來るのだつた。――
それが今日はじめて引き出され、はげしい言葉で立て續けに問ひつめられたとき彼らは相手の顏をいつまでもまじまじみつめてゐるばかりだつた。わづかに事柄が杉村に關するものであることを知つたが、杉村がやつたと推察され、そのために自分たちまでが追求されてゐる事柄は、彼らにはまるで無縁な餘計なこととしか思へなかつた。何を問はれてもただ無意味に頭を下げ、相手を忘れて杉村への怨み言を口ごもりつゝかきくどいた。その部屋を引下るとき彼らの一人がおそるおそる尋ねた。明日は出していただけますか? 問はれた紳士は、はつはつと大口を開いて笑ひ、言つたものである。今年ぢゆう一杯だ! 足が腐る
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