顏つきになり、房内をふりかへつて何かいふと、人のけはひがしてすぐに二三人立つて來た。一人ではなかつた! みんな見知つた顏である。
咽喉元まで何か出かかる言葉を、さすがに外をはばかつておさへ、その代りあらゆる親愛の情をそれ一つにこめた微笑を杉村は投げあたへた。
何がそれに向つて答へられたか。
ぢつとまたたきもせず杉村を凝視してゐるいくつかの眼は、眼尻に皺一つ寄せなかつた。それは險しくきついものになるばかりであつた。口元はいつまで經つても綻びず、固く結ばれたままにゆがむのであつた。野良からそのまま連れて來られたらしい仕事着のままのもゐる、髯も髮ものび放題の憔悴し切つたその顏にいつかはつきり浮びあがつてゐるものは、人をつきさす非難の色以外の何ものでもなかつた。杉村はいきなりひつぱたかれたやうな氣持だつた。
突然なかの一人が黄いろい並びのわるい齒を齒ぐきもろともむき出した。
「ちえつ!」
はげしく舌打ちをし、手をあげ、拳を作つて宙にうちふるやうにすると、ふたたび鐵格子をしつかと掴んで、喰ひ入るやうにこつちを見るのである。――
事實憎惡と怨恨と憤怒とがこれらの人々をとらへてゐたのであ
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