虱つぶしに説いてまはつて無理矢理に[#「無理矢理に」は底本では「無理失理に」]島田支持にして了つてさ、あの日の中央委員會を自分たちの都合のいいやうに牛耳つたんだ。――君たちは一體、農民の地方意識がどんなに根深いものか知つてゐるのか。いやそれより百姓そのものについてどれだけ知つてゐるといふんだ。」
「知るものか!」と、山田の言葉を受けて川上直吉がはげしく言ひ、すぐにあとをつづけた。「一體、組合の書記連中は杉村君の前でいうては甚だすまんが、このごろどうも出しやばりすぎるんや。先生先生いはれとるが、書記は結局組合の事務員にすぎん、組合から給料をもらうて事務を取つとる事務員や。規約に書記の仕事をはつきりさせておかんいふのもわるいが、オルグたらなんたらいうて書記がいろんなことに口ばし入れるのは大間違ひぢや。東京や大阪に住んどつて、學校途中でよして、一年や二年田舍さ來てゐたかとてなんで、百姓のことが――」
「ああ、もう理窟いふのはおいとかんか。」と突然石川剛造が鷹揚に手をあげておさへるやうな仕ぐさをし、始めて口を切つた。仲間にいふだけいはせておいて、自分は一語も發せず小氣味よげにその場の樣子を見て
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