つた。百姓家を改造した古い家だからそんな穴ぐらゐは当然だと、何が当然か考へても見ずに思つてゐた。それが毎日寝てゐるやうになつてはじめてその穴とジガ蜂とに特別な関係があるらしいことに気づいて来た。部屋に飛んで来て障子や柱にとまつたジガ蜂は、何かを求めるかのごとく、くるくると歩きまはりつつ、その穴を見つけると必ずそのなかへ入つてみる。一度ならず四度も五度も出たり入つたりする。穴のまはりを仔細ありげにぐるぐると廻る。また入る。また出る。そのうちに穴のなかから何かゴミのやうなものを運び出してくる。ゴミのなかには何かの虫の翅の切れはしのやうなものもまじつてゐるらしい。穴は体長八分ぐらゐの彼等の体がすつぽりとかくれてしまふくらゐの深さはあるらしい。さうやつてかなり長い時間かかつて穴の清掃を終へたと思ふと、ジガ蜂は戸外へ飛び去つて行つた。そしてまた帰つて来た時に、私は彼が肢の間に何かをかかへこんでゐるのを見た。それは何か羽のある小さな虫のやうだつた。彼はそれをかかへこんだまま穴のなかへ入つて行つた。獲物を押し込み終ると、すぐ飛び去つて行き、やがてまた新たないけにへをくはへて帰つて来た。今度のはジガ蜂
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