のフェーン型のものとなりまして、かえって乾くのでございます。また事実、測候所の観測によりましても、南側には霧が多く北側にはきわめて少ないと申しております。
 もちろん、農業とは違って、工業方面では、割合にその仕事場が狭くてすみますから、ある程度までは、そこに人工で、その工業の要求に近い気候すなわち人工風土を作り出すことはできましょう。しかしそれだけ、生産費の嵩むことになります。もっともその工業の要求通りの自然的気候を持つということは、そうたくさんにはありえないことでありますから、多少は常に、そこに人工的の気候を作って補わなければならないことになりますが、それにしても、気温の高過ぎるのを低くするよりも、低いのを高くする方が容易でありますし、また、湿度の高いのを低くするよりも高める方がかえって容易でもあり、かつ安価にもできます。ですから、その工業に対して、どちらかといえば多少低温すぎるとか、乾燥過ぎる方が、その反対の性質を持っている風土よりは気候的に恵まれていると考えてよいと思います。平沢の漆器はその点からは明らかに恵まれております。すでに慶長年間から、家内工業として起ったものだとのことで
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