たる毛脛《けずね》を叩く。
「お前様達、一里|駆《かけ》ッこをするのかね」と爺さん達は眼を円《まる》くしている。
そこで農家の爺さん達にお頼み申し、重い荷物は尽《ことごと》く駄馬に着けて、近道を黒羽《くろばね》町まで送り届けて貰う事とし、黒羽町の宿屋は△△屋というのが一等だと聴いたのでそこと取極《とりき》め、さて一行は半身裸体なるもあればシャツ一枚となるもある、内心困った事になったと思いながらも、程よく一列に並び、一、二、三の掛声で砂塵を蹴立てて一目散に駆け出した。
(一九)一里競争
先頭は誰ぞと見れば、腕力自慢の衣水《いすい》子|韋駄天《いだてん》走り、遥か遅れて髯将軍、羅漢《らかん》将軍の未醒《みせい》子と前後を争っていたが、七、八町に駆けるうちに、衣水子ははや凹垂《へこた》れてヒョロヒョロ走《ばし》り、四、五町にいた水戸中学の津川五郎子、非常なヘビーを出して遥か先頭に進み、続いて髯将軍、羅漢将軍等、髭面《ひげづら》抱えてスタコラ走って行《ゆ》く有様は、全く正気の沙汰《さた》とは思われず、田畑の農民等は何事ぞと、腰を伸ばして眼を見張っているばかり。
吾輩はいかにと
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