、雨に濡《うるお》う身長《みのたけ》より高い草を押分け押分け、蚤取眼《のみとりまなこ》で四方八方捜索したが、いかにしても見出す事が出来ない。咽はいよいよ渇いて来る。ある先生はショボショボ降る雨でも飲んでくれようと考えたものか、空を仰いで大口開けて突立っているが、雨はなかなか旨《うま》く口中へ降り込んではくれぬ。その馬鹿気た風体は見られたものではなかった。
(一四)暗中|水汲《みずくみ》隊
いよいよ山巓《さんてん》に近く水が無いものとすれば、胸突《むねつ》き八丁を降《くだ》って金性水《きんせいすい》まで汲みに行かねばならぬ。オオ金性水よ! 金性水よ! そこには氷のごとき清水が瀑布《たき》のように落ちているのだ。それを考えただけでも咽《のど》がグウグウ鳴る。しかしこの疲れた足で金性水を汲みに行くのは容易な事ではない。この暗い夜! 胸突き八丁の険阻。ことにこんなジメジメした夜中《やちゅう》には、蝮《まむし》が多く叢《くさむら》から途中に出ているので、それを踏み付けようものなら、生命《いのち》にも係わる危険であるが、咽の渇きも迚《とて》も怺《こら》える事が出来ぬので、一同は評議の
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