これだけの確かな手懸りがあれば、もう再び叔父さんのお目に懸るのも遠くはあるまい。さあ今一奮発だ。」
と、自ら先に立って歩き出したので、東助もようよう涙を止めて続いて行った。

    洞穴内の怪音

 かれこれ三、四里も進んだ頃、もう四辺は次第に暗くなって来た。
「もう夜になっては探せないから、今日はどこかに野宿して、明朝早く探すことにしようじゃないか。」
と、適当な場所をと見廻したが、ここらは一面の禿山と原で更に露を凌ぐに足るほどな処もない。
と、突然東助が、
「若旦那様、先方《むこう》に洞穴があります。」
と叫んだので、
「どれ。」
と指先《ゆびさ》す方を見ると十町ばかり向うの山の麓に一個《ひとつ》の洞穴がある。
「あの中に一泊しよう。」
とそこをさして行って見ると、思ったよりは広い洞《あな》で奥の方も余程深いらしい。
 荷物を卸して、座りながら、革鞄《かばん》の中からビスケット[#「ビスケット」は底本では「ビスミット」]を取り出して食っていると、
 不思議※[#感嘆符三つ、45−上−5] 不思議※[#感嘆符三つ、45−上−5]
 洞穴の奥で何やら唸《うめ》くような声がする※[#感
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