て仕方がないじゃないか、それよりも第一にどこか適当の場所を探して一まず落着く場所を拵えなければならん。」
「成程。それも御|道理《もっとも》でがす。」
と再び二人は飛行船に乗じて、今度は地と擦れ擦れに進みながら、そこここと見下すとある山の麓にこんもりとした林があってその間に一筋の小川が流れている。
「あそこがよかろう。」
とそこに飛行船を降し、その中から予《かね》て用意の天幕を取り出し、力を合せてその森のほとりに建て、飛行船を解剖して小さく畳んでその中に入れて、これで一まず仕度は整うた。
月宮号の惨状
雲井文彦と従者の東助は各自ライフル銃を肩にして篠山博士を捜索に出かけた。
野を越え山を越え処々方々を探し求めたが、更に手懸りがない。五日となり一週間となってもまだ一向に方角が判らぬ。
二人ながら落胆《がっかり》して、とある木蔭に腰を卸《おろ》して、
「どうしたんだろう。それとも途中で方角を取り違えて他の星へ行かれたのではないかしら。」
「左様でござります。場合によりましてはそんな事でもありましたかも知れましねえ。しかし折角ここまで来たものでござりますれば、今少し辛抱して
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