図々しくも逆捻《さかねじ》を喰わせて、
「僕は命賭けて得た博士だ。それが欲しくば貴様も生命を賭して奪うがいい。」
「よろしい。決闘※[#感嘆符三つ、50−下−5] 用意をなさい。」
「生意気な口を利く二才だ。さあ相手になってやろう。」
と互に銃を身構える折しも、不意に一発の銃声とともに、秋山男爵は、
「しまった※[#感嘆符三つ、50−下−9]」
と一口叫んで反り返った。
 文彦はこの様に驚いていると、
 秋山男爵は苦しげにこなたを睨んで、
「雲井、貴様は卑怯にも斯し討ちにしたな。」
 東助はすっくと立ち上って、
「貴様を射ったなあ若旦那じゃねえ。若旦那は貴様のような根性の曲った事はなさらねえ。貴様を射ったなあ己だ。今若旦那と命を取遣《とりやり》をする前に、俺は先刻洞穴の中で貴様から貰ったあの返礼をしてやったのだ。」
と如何にも憎々しげにいい放った。
 秋山男爵はこの言葉を聞いて、
「チェッ残念※[#感嘆符三つ、51−上−1]」
と一言叫んだと思うと、急所の傷手にはかなく絶命して終った。

 文彦は悪人ながらも男爵の死を悼んで杉田とともに月界に手厚く葬り、その上に紀念碑を建てて其後《それ
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