てあそ》ぶか知れない。さあ今から出かけるからお前も蹤いて来い。」
「どうぞこの敵を取って下さい。私はもう死んでもきっと秋山めを打ち懲らしてやらずにはおく事ではござりませぬ。」
二人は急ぎ外に出て、飛行船に乗るや否や全速力を以て上昇した。これは、秋山がすでに、飛行船に叔父を乗せて地球へ向けて出発してはいないかを慥かめるためで。
月界の活劇
目指す秋山の姿はいずこと、四辺を見廻したがまだ出発した形跡はない。やれ一まず安心と、今度は双眼鏡で前の洞の附近を見回すと、
「難有い。まだ居る※[#感嘆符三つ、49−下−5]」
洞穴から一里ばかりも距《へだた》った処に、一箇の飛行船があって、その側で二箇《ふたり》の人が何か頻りに立働いている。
疑いもなく秋山男爵の一行だ。
しかしもう一瞬も猶予はならない。彼らがかく立働いているのは慥かに出発の準備に相違ない。
文彦は速力を早めて近づくと、先方もそれと察したか忽々《そこそこ》に飛び乗って、もはや飛行船は飛び去る準備をすべく、その大きな両翼を緩やかに動かし初めた。
まだ両者の距離は一|哩《マイル》もある。
目下の一瞬は文彦に取っ
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