《かへつ》て遠《とほ》く見《み》え、其爲《そのため》に數知《かずし》[#ルビの「かずし」は底本では「かずす」]れず不測《ふそく》の禍《わざはひ》を釀《かも》して、此《この》洋中《やうちゆう》に難破《なんぱ》せる沈沒船《ちんぼつせん》の船體《せんたい》は既《すで》に海底《かいてい》に朽《く》ちて、名殘《なごり》の檣頭《しやうとう》のみ波間《はかん》に隱見《いんけん》せる其《その》物凄《ものすご》き光景《くわうけい》を吊《とふら》ひつゝ、進《すゝ》み進《すゝ》んで遂《つひ》に印度洋《インドやう》の海口《かいこう》ともいふ可《べ》きアデン[#「アデン」に二重傍線]灣《わん》に達《たつ》し、遙《はる》かにソコトラ[#「ソコトラ」に二重傍線]島《じま》を煙波《えんぱ》縹茫《へうぼう》たる沖《おき》に望《のぞ》むまで、大約《たいやく》二|週間《しうかん》の航路《かうろ》は毎日《まいにち》毎日《まいにち》天氣《てんき》晴朗《せいらう》で、海波《かいは》平穩《おだやか》で、十|數年《すうねん》來《らい》浪《なみ》を枕《まくら》に世《よ》を渡《わた》る水夫《すゐふ》共《ども》も未曾有《みそういう》の好《
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