窓《げんさう》を透《たう》して鮮明《あざやか》に室内《しつない》を照《てら》して居《を》つた。船中《せんちゆう》八|時《じ》三十|分《ぷん》の銅鑼《どら》は通常《つうじやう》朝食《サツパー》の報知《しらせ》である。
『や、寢※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、56−7]《ねす》ぎたぞ。』と急《いそ》ぎ飛起《とびお》き、衣服《ゐふく》を更《あらた》め、櫛髮《くしけづり》を終《をは》つて、急足《いそぎあし》に食堂《しよくどう》へ出《で》て見《み》ると、壯麗《さうれい》なる食卓《しよくたく》の正面《しようめん》には船《ふね》の規則《きそく》として例《れい》のビール樽《だる》船長《せんちやう》は威儀《ゐぎ》を正《たゞ》して着席《ちやくせき》し、それより左右《さゆう》の兩側《りやうがわ》に、英《エイ》、佛《フツ》、獨《ドク》、露《ロ》、白《ハク》、伊等《イとう》各國《かくこく》の上等《じやうとう》船客《せんきやく》は何《いづ》れも美々《びゞ》しき服裝《ふくさう》して着席《ちやくせき》せる其中《そのなか》に交《まじ》つて、美《うる》はしき春枝夫人《はるえふじん》と可憐《かれん》の日出雄少
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