《あひだ》は矢張《やはり》頭《あたま》が妙《めう》で、先刻《せんこく》と同《おな》じ樣《やう》にいろ/\の妄想《まうざう》が消《け》しても消《け》しても胸《むね》に浮《うか》んで來《き》て、魔《ま》の日《ひ》魔《ま》の刻《こく》――亞尼《アンニー》の顏《かほ》――微塵《みじん》に碎《くだ》けた白色檣燈《はくしよくしようとう》――怪《あやし》の船《ふね》――双眼鏡《さうがんきやう》などが更《かは》る/\夢《ゆめ》まぼろしと腦中《のうちゆう》にちらついて[#「ちらついて」に傍点]來《き》たが、何時《いつ》か晝間《ひる》の疲勞《つかれ》に二|時《じ》の號鐘《がうしよう》を聽《き》かぬ内《うち》に有耶無耶《うやむや》の夢《ゆめ》に落《お》ちた。
第五回 「ピアノ」と拳鬪《けんとう》
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船中の音樂會――鵞鳥聲の婦人――春枝夫人の名譽――甲板の競走――相撲――私の大閉口――曲馬師の虎
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翌朝《よくあさ》、銅鑼《どら》の鳴《な》る音《ね》に驚《おどろ》き目醒《めさ》めたのは八|時《じ》三十|分《ぷん》で、海上《かいじやう》の旭光《あさひ》は舷
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