くゑ》を晦《くら》ましたまゝ未《ま》だ世《よ》に現《あら》はれて來《こ》ぬ何《なに》よりの證據《しようこ》。あゝ、大佐《たいさ》は其後《そのご》何處《いづこ》に如何《どう》して居《を》るだらうと考《かんが》へるとまた種々《さま/″\》の想像《さうざう》も沸《わ》いて來《く》る。
此時《このとき》第《だい》二|點鐘《てんしよう》カン、カンと鳴《な》る。([#ここから割り注]船中の號鐘は一點鐘より八點鐘まで四時間交代なり[#ここで割り注終わり])
『おや、とう/\一|時《じ》になつた。』と私《わたくし》は欠伸《あくび》した。何時《いつ》まで考《かんが》へて居《を》つたとて際限《さいげん》のない事《こと》、且《か》つは此樣《こんな》に夜《よ》を更《ふ》かすのは衞生上《ゑいせいじやう》にも極《きわ》めて愼《つゝし》む可《べ》き事《こと》と思《おも》つたので私《わたくし》は現《げん》に想像《さうぞう》の材料《ざいりよう》となつて居《を》る古新聞《ふるしんぶん》をば押丸《おしまろ》めて部室《へや》の片隅《かたすみ》へ押遣《おしや》り、強《し》いて寢臺《ねだい》に横《よこたは》つた。初《はじめ》の間
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