こと》、私《わたくし》がまだ今回《こんくわい》の漫遊《まんゆう》に上《のぼ》らぬ以前《いぜん》、ある夏《なつ》、北海道旅行《ほくかいだうりよかう》を企《くわだ》てた時《とき》、横濱《よこはま》から凾館《はこだて》へ赴《おもむ》く※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]船《きせん》の中《なか》で、圖《はか》らずも大佐《たいさ》と對面《たいめん》した事《こと》がある。其頃《そのころ》大佐《たいさ》は年輩《としごろ》三十二三、威風《ゐふう》凛々《りん/\》たる快男子《くわいだんし》で、其《その》眼光《がんくわう》の烱々《けい/\》たると、其《その》音聲《おんせい》の朗々《ろう/\》たるとは、如何《いか》にも有爲《いうゐ》の氣象《きしやう》と果斷《くわだん》の性質《せいしつ》に富《と》んで居《を》るかを想《おも》はしめた。其人《そのひと》今《いま》や新聞《しんぶん》の題目《だいもく》となつて世人《よのひと》の審《いぶか》る旅路《たびぢ》に志《こゝろざ》したといふ、其《その》行先《ゆくさき》は何地《いづこ》であらう、其《その》目的《もくてき》は何《なん》であらう。軍事上《ぐんじじやう》の大
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