》や領事館《りようじくわん》で、本國《ほんこく》の珍《めづ》らしき事件《こと》を耳《みゝ》にする外《ほか》は、日本《につぽん》の新聞《しんぶん》などを見《み》る事《こと》は極《きは》めて稀《まれ》であるから、私《わたくし》は實《じつ》に懷《なつ》かしく感《かん》じた。急《いそ》ぎ皺《しわ》を延《のば》して見《み》ると、これは既《すで》に一|年《ねん》半《はん》も前《まへ》の東京《とうけい》の某《ぼう》新聞《しんぶん》であつた。一|年《ねん》半《はん》も前《まへ》といへば私《わたくし》がまだ亞米利加《アメリカ》の大陸《たいりく》に滯在《たいざい》して居《を》つた時分《じぶん》の事《こと》で、隨分《ずいぶん》古《ふる》い新聞《しんぶん》ではあるが、古《ふる》くつても何《な》んでもよい、故郷《こきやう》懷《なつ》かしと思《おも》ふ一|念《ねん》に、眼《め》も放《はな》たず讀《よ》んでゆく内《うち》、忽《たちま》ち眼《め》に着《つ》いた一|段《だん》の記事《きじ》があつた。それは本紙《ほんし》第《だい》二|面《めん》の左《さ》の如《ごと》き雜報《ざつぽう》であつた。
◎櫻木豫備海軍大佐の行衞[
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