見《み》たが一|本《ぽん》も無《な》い、不圖《ふと》思《おも》ひ出《だ》したのは先刻《せんこく》ネープルス[#「ネープルス」に二重傍線]港《かう》を出發《しゆつぱつ》のみぎり、濱島《はまじま》の贈《おく》つて呉《く》れた數《かず》ある贈物《おくりもの》の中《うち》、四|角《かく》な新聞《しんぶん》包《つゝみ》は、若《も》しや煙草《たばこ》の箱《はこ》ではあるまいかと考《かんが》へたので、急《いそ》ぎ開《ひら》いて見《み》ると果然《くわぜん》最上《さいじやう》の葉卷《はまき》! 『しめたり。』と火《ひ》を點《てん》じて、スパスパやりながら餘念《よねん》もなく其邊《そのへん》を見廻《みまわ》して居《を》る内《うち》、見《み》ると今《いま》葉卷《はまき》の箱《はこ》の包《つゝ》んであつた新聞紙《しんぶんし》。
『オヤ、日本《につぽん》の新聞《しんぶん》だよ。』と私《わたくし》は思《おも》はず取上《とりあ》げた。
本國《ほんごく》を出《い》でゝから二|年間《ねんかん》、旅《たび》から旅《たび》へと遍歴《へんれき》して歩《ある》く身《み》は、折々《をり/\》日本《につぽん》の公使館《こうしくわん
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