何等《なにら》かの目的《もくてき》を有《いう》して居《を》る船《ふね》か夫《それ》は分《わか》らない。勿論《もちろん》、外形《ぐわいけい》に現《あらは》れても何《なに》も審《いぶか》しい點《てん》はないが、少《すこ》しく私《わたくし》の眼《め》に異樣《ゐやう》に覺《おぼ》えたのは、總《さう》噸數《とんすう》一千|噸《とん》位《くらゐ》にしては其《その》構造《かうざう》の餘《あま》りに堅固《けんご》らしいのと、また其《その》甲板《かんぱん》の下部《した》には數門《すもん》の大砲等《たいほうなど》の搭載《つみこまれ》て居《を》るのではあるまいか、其《その》船脚《ふなあし》は尋常《じんじやう》ならず深《ふか》く沈《しづ》んで見《み》える。今《いま》や其《その》二本《にほん》の烟筒《えんとう》から盛《さか》んに黒煙《こくえん》を吐《は》いて居《を》るのは既《すで》に出港《しゆつかう》の時刻《じこく》に達《たつ》したのであらう、見《み》る/\船首《せんしゆ》の錨《いかり》は卷揚《まきあ》げられて、徐々《じよ/\》として進航《しんかう》を始《はじ》めた。私《わたくし》は何氣《なにげ》なく衣袋《ポツ
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