とば》の方《はう》を眺《なが》めつゝ
『日出雄《ひでを》や、あの向《むか》ふに見《み》える高《たか》い山《やま》を覺《おぼ》えておいでかえ。』と住馴《すみな》れし子ープルス[#「子ープルス」に二重傍線]市街《まち》の東南《とうなん》に聳《そび》ゆる山《やま》を指《ゆびざ》すと、日出雄少年《ひでをせうねん》は
『モリス[#「モリス」に二重傍線]山《ざん》でせう、私《わたくし》はよつく覺《おぼ》えて居《ゐ》ますよ。』とパツチリとした眼《め》で母君《はゝぎみ》の顏《かほ》を見上《みあ》げた。
『おゝ、それなら、あの電氣燈《でんきとう》が澤山《たくさん》に輝《かゞや》いて、大《おほ》きな煙筒《けむりだし》が五|本《ほん》も六|本《ぽん》も並《なら》んで居《を》る處《ところ》は――。』
『サンガロー[#「サンガロー」に二重傍線]街《まち》――おつかさん、私《わたくし》の家《いへ》も彼處《あそこ》にあるんですねえ。』と少年《せうねん》は兩手《りようて》を鐵欄《てすり》の上《うへ》に載《の》せて
『父君《おとつさん》はもう家《うち》へお皈《かへ》りになつたでせうか。』
『おゝ、お皈《かへ》りになりま
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