ん》に碎《くだ》けて、其《その》燈光《ともしび》は消《き》え、同時《どうじ》に、此《この》船《ふね》の主長《しゆちやう》ともいふべき船長《せんちやう》が船橋《せんけう》より墮落《ついらく》して、心《こゝろ》の不快《ふくわい》を抱《いだ》き、顏《かほ》に憤怒《ふんぬ》の相《さう》を現《あら》はしたなど、或《ある》意味《いみ》からいふと、何《なに》か此《この》弦月丸《げんげつまる》に禍《わざはひ》の起《おこ》る其《その》前兆《ぜんてう》ではあるまいかと、どうも好《よ》い心持《こゝち》はしなかつたのである。無論《むろん》此樣《こん》な妄想《もうざう》は、平生《いつも》ならば苦《く》もなく打消《うちけ》されるのだが、今日《けふ》は先刻《せんこく》から亞尼《アンニー》が、魔《ま》の日《ひ》だの魔《ま》の刻《こく》だのと言《い》つた言葉《ことば》や、濱島《はまじま》が日頃《ひごろ》に似《に》ぬ氣遣《きづか》はし氣《げ》なりし樣子《やうす》までが、一時《いちじ》に心《こゝろ》に浮《うか》んで來《き》て、非常《ひじやう》に變《へん》な心地《こゝち》がしたので、寧《むし》ろ此《この》塲《ば》を立去《たち
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