《へいげい》して居《を》る。私《わたくし》は三々五々《さん/\ごゞ》群《むれ》をなして、其處此處《そここゝ》に立《た》つて居《を》る、顏色《いろ》の際立《きはだ》つて白《しろ》い白耳義人《ベルギーじん》や、「コスメチツク」で鼻髯《ひげ》を劍《けん》のやうに塗《ぬ》り固《かた》めた佛蘭西《フランス》の若紳士《わかしんし》や、あまりに酒《さけ》を飮《の》んで酒《さけ》のために鼻《はな》の赤《あか》くなつた獨逸《ドイツ》の陸軍士官《りくぐんしくわん》や、其他《そのほか》美人《びじん》の標本《へうほん》ともいふ可《べ》き伊太利《イタリー》の女俳優《をんなはいゆう》や、色《いろ》の無暗《むやみ》に黒《くろ》い印度《インド》邊《へん》の大富豪《おほがねもち》の船客等《せんきやくら》の間《あひだ》に立交《たちまじら》つて、此《この》目醒《めざ》ましき光景《くわうけい》を見廻《みまは》しつゝ、春枝夫人《はるえふじん》とくさ/″\の物語《ものがたり》をして居《を》つたが、此時《このとき》不意《ふい》にだ、實《じつ》に不意《ふい》に私《わたくし》の背部《うしろ》で、『や、や、や、しまつたゾ。』と一度《いち
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