《す》ぐ隣合《となりあ》つて居《を》つたので萬事《ばんじ》に就《つ》いて都合《つがう》が宜《よ》からうと思《おも》はるゝ。
私《わたくし》は元來《ぐわんらい》膝栗毛的《ひざくりげてき》の旅行《りよかう》であるから、何《なに》も面倒《めんだう》はない、手提革包《てさげかばん》一個《ひとつ》を船室《キヤビン》の中《なか》へ投込《なげこ》んだまゝ直《す》ぐ春枝夫人等《はるえふじんら》の船室《キヤビン》へ訪《おと》づれた。此時《このとき》夫人《ふじん》は少年《せうねん》を膝《ひざ》に上《の》せて、其《その》良君《をつと》や他《ほか》の三人《みたり》を相手《あひて》に談話《はなし》をして居《を》つたが、私《わたくし》の姿《すがた》を見《み》るより
『おや、もうお片附《かたづき》になりましたの。』といつて嬋娟《せんけん》たる姿《すがた》は急《いそ》ぎ立《た》ち迎《むか》へた。
『なあに、柳川君《やながはくん》には片附《かたづ》けるやうな荷物《にもつ》もないのさ。』と濱島《はまじま》は聲《こゑ》高《たか》く笑《わら》つて『さあ。』とすゝめた倚子《ゐす》によつて、私《わたくし》も此《この》仲間《なかま
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