中部《ちゆうぶ》の船室《キヤビン》は最《もつと》も多《おほ》く人《ひと》の望《のぞ》む所《ところ》である。何故《なぜ》かと言《い》へば航海中《かうかいちゆう》船《ふね》の動搖《どうえう》を感《かん》ずる事《こと》が比較的《ひかくてき》に少《すく》ない爲《ため》で、此《この》室《へや》を占領《せんりやう》する爲《ため》には虎鬚《とらひげ》の獨逸人《ドイツじん》や、羅馬風《ローマンスタイル》の鼻《はな》の高《たか》い佛蘭西人等《フランスじんとう》に隨分《ずゐぶん》競爭者《きようそうしや》が澤山《たくさん》あつたが、幸《さいはひ》にもネープルス[#「ネープルス」に二重傍線]市《し》中《ちゆう》で「富貴《ふうき》なる日本人《につぽんじん》。」と盛名《せいめい》隆々《りう/\》たる濱島武文《はまじまたけぶみ》の特別《とくべつ》なる盡力《じんりよく》があつたので、吾等《われら》は遂《つひ》に此《この》最上《さいじやう》の船室《キヤビン》を占領《せんりやう》する事《こと》になつた。加《くわ》ふるに春枝夫人《はるえふじん》、日出雄少年《ひでをせうねん》の部室《へや》と私《わたくし》の部室《へや》とは直
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