航海《かうかい》には、弦月丸《げんげつまる》に澤山《たくさん》の黄金《わうごん》と眞珠《しんじゆ》とが積入《つみい》れてあります相《さう》な、黄金《わうごん》と眞珠《しんじゆ》とが波《なみ》の荒《あら》い海上《かいじやう》で集《あつま》ると、屹度《きつと》恐《おそ》ろしい祟《たゝり》を致《いた》します。あゝ、不吉《ふきつ》の上《うへ》にも不吉《ふきつ》。賓人《まれびと》よ、私《わたくし》の心《こゝろ》の千分《せんぶん》の一《いち》でもお察《さつ》しになつたら、どうか奧樣《おくさま》と日出雄樣《ひでをさま》を助《たす》けると思《おも》つて、今夜《こんや》の御出帆《ごしゆつぱん》をお延《の》べ下《くだ》さい。』と拜《おが》まぬばかりに手《て》を合《あは》せた。聽《き》いて見《み》るとイヤハヤ無※[#「(禾+尤)/上/日」、22−10]《ばか》な話《はなし》! 西洋《せいよう》でもいろ/\と縁起《えんぎ》を語《かた》る人《ひと》はあるが、此《この》老女《らうぢよ》のやうなのはまア珍《めづ》らしからう。私《わたくし》は大笑《おほわら》ひに笑《わら》つてやらうと考《かんが》へたが、待《ま》てよ、
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