あなた》を信《しん》じますよ、貴方《あなた》は决《けつ》してお笑《わら》ひになりますまいねえ。』と前置《まへおき》をして斯《か》う言《い》つた。
『ウルピノ[#「ウルピノ」に二重傍線]山《さん》の聖人《ひじり》の仰《おつしや》つた樣《やう》に、昔《むかし》から色々《いろ/\》の口碑《くちつたへ》のある中《なか》で、船旅《ふなたび》程《ほど》時日《とき》を選《えら》ばねばならぬものはありません、凶日《わるいひ》に旅立《たびだ》つた人《ひと》は屹度《きつと》災難《わざはひ》に出逢《であ》ひますよ。これは本當《ほんたう》です、現《げん》に私《わたくし》の一人《ひとり》の悴《せがれ》も、七八|年《ねん》以前《いぜん》の事《こと》、私《わたくし》が切《せつ》に止《と》めるのも聽《き》かで、十|月《ぐわつ》の祟《たゝり》の日《ひ》に家出《いへで》をしたばかりに、終《つひ》に世《よ》に恐《おそ》ろしい海蛇《うみへび》に捕《と》られてしまいました。私《わたくし》にはよく分《わか》つて居《ゐ》ますよ。奧樣《おくさま》とて日出雄樣《ひでをさま》とて今夜《こんや》御出帆《ごしゆつぱん》になつたら决《けつ》し
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