な》しい事《こと》はありません。はじめて奧樣《おくさま》や日出雄樣《ひでをさま》が、日本《にほん》へお皈《かへ》りになると承《うけたまは》つた時《とき》は本當《ほんたう》に魂消《たまぎ》えましたよ、然《しか》しそれは致方《いたしかた》もありませんが、其後《そのゝち》よく承《うけたまは》ると、御出帆《ごしゆつぱん》の時日《じじつ》は時《とき》もあらうに、今夜《こんや》の十一|時《じ》半《はん》……。』といひかけて唇《くちびる》をふるはし
『あの、あの、今夜《こんや》十一|時《じ》半《はん》に御出帆《ごしゆつぱん》になつては――。』
『何《なに》、今夜《こんや》の※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]船《きせん》で出發《しゆつぱつ》すると如何《どう》したのだ。』と私《わたくし》は眼《まなこ》を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つた。亞尼《アンニー》は胸《むね》の鏡《かゞみ》に手《て》を當《あ》てゝ
『私《わたくし》は神樣《かみさま》に誓《ちか》つて申《まう》しますよ、貴方《あなた》はまだ御存《ごぞん》じはありますまいが、大變《たいへん》な事《こと》があります。此事《
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