《ゆ》く人《ひと》を送《おく》るかの如《ごと》く、頻《しき》りに涙《なみだ》を流《なが》して居《を》る。
私《わたくし》は何故《なぜ》ともなく異樣《ゐやう》に感《かん》じた。
『オヤ、亞尼《アンニー》がまた詰《つま》らぬ事《こと》を考《かんが》へて泣《な》いて居《を》りますよ。』と、春枝夫人《はるえふじん》は良人《おつと》の顏《かほ》を眺《なが》めた。
頓《やが》て、此《この》集會《つどひ》も終《をは》ると、十|時《じ》間近《まぢか》で、いよ/\弦月丸《げんげつまる》へ乘船《のりくみ》の時刻《じこく》とはなつたので、濱島《はまじま》の一家族《いつかぞく》と、私《わたくし》とは同《おな》じ馬車《ばしや》で、多《おほく》の人《ひと》に見送《みおく》られながら波止塲《はとば》に來《きた》り、其邊《そのへん》の或《ある》茶亭《ちやてい》に休憇《きうけい》した、此處《こゝ》で彼等《かれら》の間《あひだ》には、それ/\袂別《わかれ》の言《ことば》もあらうと思《おも》つたので、私《わたくし》は氣轉《きてん》よく一人《ひとり》離《はな》れて波打際《なみうちぎは》へと歩《あゆ》み出《だ》した。
此時《こ
前へ
次へ
全603ページ中33ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
押川 春浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング