れ》しいんでせう。』と言《い》つて、紅《くれない》のハンカチーフに笑顏《えかほ》を蔽《お》ふた。

    第二回 魔《ま》の日《ひ》魔《ま》の刻《こく》
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送別會――老女|亞尼《アンニー》――ウルピノ[#「ウルピノ」に二重傍線]山の聖人――十月の祟の日――黄金と眞珠――月夜の出港
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 それから談話《はなし》にはまた一段《いちだん》の花《はな》が咲《さ》いて、日永《ひなが》の五|月《ぐわつ》の空《そら》もいつか夕陽《ゆうひ》が斜《なゝめ》に射《さ》すやうにあつたので、私《わたくし》は一先《ひとま》づ暇乞《いとまごひ》せんと折《をり》を見《み》て『いづれ今夜《こんや》弦月丸《げんげつまる》にて――。』と立《た》ちかけると、濱島《はまじま》は周章《あはて》て押止《おしとゞ》め
『ま、ま、お待《ま》ちなさい、お待《ま》ちなさい、今《いま》から旅亭《やどや》へ皈《かへ》つたとて何《なに》になります。久《ひさし》ぶりの面會《めんくわい》なるを今日《けふ》は足《た》る程《ほど》語《かた》つて今夜《こんや》の御出發《ごしゆつぱつ》も是非《ぜひ》に私《わた
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